【読書感想】お金の話 (著者:ひろゆき)

概要

先行き不透明なこれからの時代を生き抜くため、一般人が持つべきお金に対する考え方や稼ぎ方について、2ch創設者のひろゆき氏が語る本。

ひろゆき氏が、Youtubeやニコ生配信で発信している情報と重複が多いので、ひろゆき氏のYoutubeやニコ生配信をチェックしている方にとっては新鮮な情報は少なく感じるかもしれない。ただ、総集編的にひろゆき氏のお金や稼ぎ方に対する考え方を俯瞰でき、文字に起こされることで自分のペースで理解を深めることができるので、買って損はない。

本書を貫く主張としては、日本が生き残るためには島国という特殊性を活かしたベーシックインカムの導入の必要性を述べている。ベーシックインカムのメリットは、人々が最低限の生活が保証されるため、嫌々生活のために働く必要がなくなる(ブラック企業の淘汰)、解雇が容易になり人材の流動性が高まるなど。

また、現在の、金融緩和による為替操作は短期的に効果はあっても長期的に見ると経済成長は実現せず、10年後の生産性を高めるためには、教育への投資を深めていく必要があり、教育への投資に関して否定的な国はこの世に存在しない。

一方、個々人が生き残るには、お金を使わない能力と稼ぐ能力を磨くが必要があるとのこと。お金を使わないためには、自分の幸せにとって本当に必要なお金の量を把握すること。そして、お金のかからないような趣味を見つけたり、安い部屋に住むなど、不要なコストを極力減らすこと。稼ぐ能力には、まずマーケットを見つけることが重要。例えば、絵が描ける人は画家を目指すより、漫画家を目指した方が市場規模的にも稼ぎやすい。スキルも人が困っていたり・求めていることの中で、自分が得意だったり、興味のある領域の分野を勉強してスキルアップするのが良いとのこと。英語圏でも仕事しやすいので、今でもプログラミングのスキル習得はコスパが高い。

全体的に、非常に合理的なひろゆき氏の考え方がじっくり読める内容です!

TIPS

・トップになる必要はない。能力やモノの価値は相対的なものなので、自分が獲得した能力が埋もれない場所を見つける。

・質をあげるかマーケットを狙うか。

・幸せを感じるかどうかはきわめて主観的なもの。

・若い時のお金を年をとってからのお金よりも価値がある。

所感

欲望を追及する時代は終わり、個々人が自らの幸せを再定義し、我が道をゆく時代が来たといえる。

欲望を追及する時代は、高度経済成長期からバブル期、ひたすら成長を続ける社会をバックグラウンドに、国民全体が一つのサクセスストーリーを追い求めていた。有名大学を出て大企業に就職し、定年まで勤めあげる。その中でマイホーム・マイカーを購入して、子供をもうけて、老後は年金生活。昭和から平成初期において、一般人が十分に実現できたサクセスストーリーがこれだ。

令和の現代、このストーリーはほぼ崩壊した。良い大学を出てもその先の将来は全く保証されず、大企業の倒産も珍しくない。稼げない日本企業は生産性の低い社員を雇うことが難しくなり、早期退職制度などリストラを断行する企業も増加。経済的な低迷も相まって未婚率も増加し、出生数も毎年低下。その影響で人口は毎年減少を続け、国外からも日本は投資先としての魅力を失いお金も集まらない。経済不況により仕事の数は減り、人口は比較的仕事の多い都市部に集中し、地方の地価は下落を続けており、不動産資産を保有する旨みも激減した。

現状、政府は本質的な経済成長を促すような施策を打てていない。日本の借金は増え続け、高齢者の増加による医療費負担の増大など、未来の若者に対する負担は増加する一方であり、軽減される兆しは全く見えてこない。

このような経済的な成長が望めない時代においては、前時代において共同幻想的なサクセスストーリーを追及するのではなく、個々人が、自らの幸せを再定義して、それを追い求めることがより幸せに近づける方法なのかもしれない。そのためには、ひろゆき氏がいうように、自分にとって本当に必要なものにだけお金を使い、不要な支出を極力減らすこと。そして、他人と比較しないことが最も重要な思考といえる。周りと同じような人生を追及した前時代の価値観ではなく、自分なりの人生を描き、そこに幸せを感じること。ひろゆき氏は幸せは主観的なものと言っているが、主観だからこそ自由なのでだ。年収300万円でも幸せな人もいれば、年収1000万円でも不幸な人もいる。自分の幸せを定義して、能動的に幸せを感じる能力が、これからの時代を生き抜くために必要な力なのかもしれない。